設立趣意書
今日、環境問題は地球的規模に広がり、人口問題や食糧問題、さらには貿易のあり方ともかかわる国際的課題になっています。同時に、産業技術、生活様式、国土構造さらには社会経済システムの根本的転換を促しており、環境保全型産業社会のビジョンを探究していくことが全世界的課題となっています。
現代産業社会の見直しは、地球環境問題が典型的に示しているように、南北間や世代間の衡平とは何か、開発(発展)の権利や豊かさの具体的内容とは何か、環境に配慮した社会経済システムとは何か、等に関する原理的検討なくしては、上記ビジョンやそのための公共政策の枠組みを提示することはできません。地球環境を保全しつつ豊かさを実現するための理論と政策が求められています。
こうした社会的要請と学問研究への期待に応える学会の取り組みは、個別諸科学においてそれなりに進められてきましたが、未だ十分なものとは言えません。特に、環境問題を引き起こす原因となる経済とその制御を目的とする政策との相互関係を対象とし、かつ環境問題や政策の総合性を反映した社会諸科学を中心とした学際的研究は、未だ緒に着いたばかりであると言わざるをえません。
このような状況をふまえ、個別の学問の垣根を超えて問題意識の重なりあいを基礎に置く共同研究等を活発化させなければなりません。そのためには、学界のみならず、環境政策に関与する行政、企業、NGO等の専門家が一堂に会し意見交換できるよう、新しいコミュニケーションの場をつくることは緊急かつ意義深い課題だと考えます。
急速な経済成長が進むなかで、新しい発展モデルを模索しつつあるアジアにおいて、上記のような趣旨に基づく学会が設立されることは、国際的意義を有するものと考えます。
我々は、経済学、政策学および関連諸科学を総合し、環境と経済・政策のかかわりについて学際的ならびに国際的な研究と交流を促進するために、環境経済・政策学会を設立し、その発展を期するものであります。
1995年12月2日